愛知は古くから良質な竹が採れる土地柄であったようです。*現在の春日井市坂下地区は、その昔「竹と生糸に金がなる」とうたわれ、江戸時代には尾張藩侯による「御留藪(おとめやぶ)」が14カ所もあり、明治の中頃から昭和初めにかけては「竹藪一反を所有している家は、田一町持っているのと同じぐらいの収入がある」と言われていたそうです。また、犬山市羽黒で作られた竹の弓が平安時代に朝廷に献上された記録も残っており、この地域からは繊維質の強い最高品質の竹材が流通していたようです。このように、尾張北東部は、古来より、生活に欠かせない貴重な材料としての「竹」を生産する地域でした。
三河西部の足助周辺は、古くから良質な真竹が採れる産地で、原竹から竹籠の生産まで、数多くの竹に関わる職人を生んだ地域でした。三河地区は、豊富な漁場である三河湾に近いこともあり、特に、海苔養殖の支柱に使われる“海苔竹”を大量に供給してきた歴史があります。また、名古屋市の西隣に位置する大治町では、扇子に使われる扇骨の一大生産地として栄えた時期がありました。しかしながら、地元から良質な竹を産出した愛知県も、昭和の後半から、新素材(プラスチックなどの石油製品)や輸入竹材に押され、地元産の竹の需要は徐々に減少していきました。
21世紀を迎えた近年、農産物に対する安全・安心志向の高まりや、環境問題への関心の高まりの中で、「地産地消」「天然素材」への注目度が益々高まってきています。現在、愛知県では、豊田市足助町、東郷町、岡崎市、春日井市などの良質な竹材が、あいちの竹屋の会員の手により吟味・伐採され、お客様の要望に合わせて、地元産の竹を出荷しています。私たちの竹は、生活シーンを彩る伝統文化に、歴史的建造物の修復・復元に、多方面より高い評価をいただいています。
私たちあいちの竹屋は、その歴史と積み重ねた経験で、これから未来に向けた新しい提案や創造活動にも取り組んで参ります。是非、“愛知ブランドの最高品質の竹”を、9社のあいちの竹屋会員にご用命ください。
*郷土誌かすがい 第37号 (平成2年9月15日発行)より引用